近年ではお通夜と告別式を行う一般的な葬儀とは異なり、お通夜や告別式を省略して火葬だけを行う直葬形式が増えています。葬儀にかかる手間や費用を抑えることで、遺族にかかる経済的・精神的な負担を減らすことが可能です。直葬形式ではお通夜や告別式を省略するため、僧侶を呼ばないという大きな特徴があります。そもそもお経は仏教式葬儀で行われるもので、お経をあげることで故人は現世の苦しみから逃れ、成仏できるようになると考えられています。そのため、お通夜や告別式では僧侶による読経の時間を設けることが多くなっています。また、読経は仏教式のみにあるもので、キリスト教式や神式葬儀では行われません。キリスト教式の場合は牧師や神父が祈祷を行い、神式は神職が祝詞を奏上します。
しかし、いくら通夜や葬儀をしないとは言え、「何もなしでは薄情なのでは」「お経がないと故人が成仏できないのではないか」と考え、「お経だけでもあげてもらいたい」と希望する遺族もいます。果たしてそれは可能なのでしょうか。結論から言うと、直葬形式であっても僧侶に相談してお経を読んでもらうことは可能です。ただ、一般的な葬儀とはお経をあげるタイミングが異なるため、葬儀会社を含めてよく確認しておくことが大切です。
お通夜や告別式を行わない場合、一体どのタイミングで僧侶にお経をあげてもらうのでしょうか。直葬形式の場合、遺体を安置している安置所か、火葬場の炉の前のお別れするタイミングで読経をいただくことになります。まず、安置所での読経について確認しておきましょう。人は亡くなってから24時間は火葬、埋葬してはいけないと法律で決まっているため、丸一日は遺体を安置しなければなりません。これは直葬の場合でも同じです。遺体を安置するのは病院や葬儀社の一時預かりを利用する人が多いですが、中には故人と最後に過ごしたいと自宅に遺体を運ぶこともあります。どの場所で遺体を安置するにせよ、そこに僧侶を招いてお経を読んでもらうことは可能です。この場合、お経は10分程度とそれほど長い時間はかかりません。
火葬場の炉の前でお経を読んでもらいたい場合は、僧侶にその旨を伝えて火葬場まで来てもらうことになります。火葬場は予約制で長々と居続けることはできませんので、炉前読経の場合のお経は5分ほどの短い時間で終わることもあります。また、お経を読んでもらうとなるとそれだけ最期のお別れに割ける時間は短くなります。できるだけ長く遺族だけで見送ってあげたいという場合は、安置所でお経を読んでもらうのがおすすめです。
例え直葬形式であっても、僧侶を招くと当然お布施を渡さなければなりません。お布施は「お車代」「御膳料」「読経料」「戒名料」の4つに分類されます。直葬形式の場合は食事の席は設けないことが多いですので、直葬で必要になるのは読経料と戒名料、お車代になります。お車代は僧侶に対して渡す交通費で、お布施とは別に包むのがマナーです。遺族が送迎を行う場合は必要ありません。また、僧侶が使うタクシーをチャーターした場合も費用はタクシー会社に支払うため、やはりお車代を包む必要はありません。
直葬形式では、供養の内容によってお布施の金額が変わります。火葬場で短いお経をあげてもらう場合は3万円、安置所と火葬場の両方であげてもらう場合は10万円を包むのが一般的です。お布施はそもそも感謝の気持ちとしてお渡しするものですから、失礼のない金額を包むようにしましょう。戒名を付けてもらう場合のお布施は、15万円~20万円が相場です。戒名にはランクがあり、最も位が高い戒名を付けてもらう場合は100万円以上かかることもあります。戒名は同じ宗派であっても寺院によって値段が異なるため、僧侶や寺院に直接尋ねても失礼にならないとされています。必要に応じて相談するようにしましょう。
先祖から続く菩提寺がある場合、葬儀を行う場合は例え直葬であっても連絡するのがマナーです。先祖の墓に納骨するには、お寺も段取りが必要です。そのため、直葬形式で葬儀をあげることになったタイミングで「僧侶を招いた方が良いか」「戒名を付ける必要はあるか」について菩提寺に確認を取るようにしましょう。「読経してもらわないから」と連絡せずに葬儀をあげてしまうと、納骨を断られてしまう可能性があります。菩提寺は葬儀だけではなくその後の法要でもお世話になるため、良い関係を保つという意味でも事前相談をすることは大切です。菩提寺がない、無宗教葬儀でお経をあげてもらいたいという場合は葬儀会社に相談するようにしましょう。
お通夜や告別式を行わない直葬形式のお葬式であっても、僧侶を招いてお経をあげてもらうことは可能です。ただし、一般的な葬儀とは読経のタイミングが異なるため、僧侶や葬儀会社とよく相談して流れを把握しておくようにしましょう。また、僧侶を招く以上お布施は必要になります。戒名や納骨についてもよく確認しておくことが大切です。
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