今日では、お布施は法要や法事をしてくれた僧侶に対しての謝礼という意味でよく使われています。しかしながらお布施は元来仏教用語で、その本質を知ることで、現代のお布施への理解が進みます。
お布施はサンスクリット語で「ダーナ」と言います。ダーナは旦那の音源にもなっていて、広く与えるというのが本来の意味です。何かを与えることで自分の中にあるモノに対する執着心を捨てるという仏道修行でもあり、相手の役に立ちたいという感謝の行動でもあります。ダーナには大きく分けて3種類あり、「財施」「法施」「無畏施」と言います。財施とはお金や衣服食料を必要な人に与えることです。財産を捨て去ることで、そのこだわりから抜け出す実践方法で、喜捨とも言われています。法施とは、説法をして相手を正しい道に導くことです。無畏施とは、不安や恐怖から人々を開放することです。法施や無畏施は僧侶の役割です。僧侶が法施・無畏施をして、遺族が財施をするという関係が現代まで続いているのです。そしてそれにより檀家という制度が維持されています。
現代においてもお布施とは自らの「気持ち」の実践行為であり、通常の売買の「支払い」とは性質を異にします。そして気持ちであるがゆえに葬儀の謝礼としてお布施を納める時にマナーが存在します。まず無地の封筒を用意して、表に濃い墨で「お布施」と書き、その下に名前あるいは家名を書いてお金を包みます。封筒の裏には住所と包んだ金額を書きます。お布施を渡すタイミングは、宗派によって多少違いますが、葬儀の前か葬儀終了後の食事の席で渡すのが一般的です。お布施を渡す時には切手盆に載せるか、袱紗(ふくさ)に包んで僧侶に納めましょう。またその際には必ず名前が僧侶側に行くように渡しましょう。
葬儀で渡すお布施には読経料と読経料が含まれています。それぞれ説明します。
読経料とは、葬儀の際にお経を読んでくれた僧侶へのお礼で、お経料とも呼ばれています。相場は1日あたり3万円~5万円くらいの金額です。
戒名料とは、戒名を付けてくれた僧侶へのお礼として渡すものです。仏式の葬儀では、俗名ではなく仏教徒としての戒名で葬儀を行う必要があります。したがって僧侶に戒名を付けてもらうのほぼ必須です。宗派によって異なりますが、戒名は一般的に「院号」「道号」「戒名」「位号」に分かれています。それらを付けたり、その位が高くなることで相場が変わります。位号が「信士」「信女」だと10万~20万程度、「居士」「大姉」で15万~30万程度かかります。また院号を付けると50万円以上にもなります。ただし戒名の位は故人の社会的地位や御仏に対しての貢献度で決まり、原則故人や遺族で決められるものではありません。
通常は読経料と戒名料を併せて「お布施」として僧侶に渡します。読経をする僧侶と戒名を付けてくれる僧侶が同一の場合がほとんどだからです。しかしながら、読経と戒名を別々の僧侶に頼んで、読経料と戒名料をそれぞれに包むケースもあります。ただしそうした場合には必ず先祖の墓がある菩提寺と相談しましょう。宗派や寺によっては、読経と戒名を別々にすることを認めないところもあります。円滑な葬儀の進行のためにも、故人が生前の内に戒名について家族会議をしておくのがいいかも知れません。
お布施以外にも、葬儀をあげてくれた僧侶へのお礼としてお車代とお膳料があります。それぞれ説明します。
お車代とは、通夜や葬儀に来てくれた僧侶への交通費です。お布施とは別に白無地の封筒を用意し、封筒の表に「お車代」と濃い墨で書き、その下に名前か家名を書きます。裏には住所と金額を記載します。葬儀の前か葬儀終了後の食事の際にお布施と一緒に渡しましょう。自分たちで僧侶を送迎した場合や、菩提寺で葬儀をあげた場合にはお車代は不要です。お車代の相場は5,000円~10,000円ですが、遠方から来てもらう場合にはその実費に合わせてお車代を包みましょう。
お膳料とは、通夜ぶるまいや精進落としの飲食の場に、僧侶が参加しない場合に渡すお礼のことです。お車代同様、白無地の封筒の表に「お膳料」と濃い墨で書き、その下に名前を書きます。裏には住所と金額を記載します。葬儀の前後にお布施と一緒に渡しましょう。僧侶が通夜ぶるまいや精進落としに参加した場合はお膳料を渡す必要はありません。お膳料の相場は5,000円~10,000円程度です。一人分の1回あたりの食費と考えれば分かりやすいかもしれません。
お布施はあくまで感謝の「気持ち」であり、料金ではありません。したがって明示的な価格は存在しません。しかし消費者の立場として一定の目安が欲しいのもまた事実です。どのくらい必要なのかを事前に知りたい場合、菩提寺や葬儀社、親戚に相談しましょう。自分たちが払える範囲で払うことが、お布施の本来の意味から考えても適切です。
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