人が亡くなると遺産相続が発生します。法定相続人とは民法で定められた相続人で、亡くなった人の血族と配偶者です。法定相続人には順位と相続の割合が決められていて、配偶者は順位に関係なく常に相続人になります。
第1順位になるのは亡くなった人の子供で、子供には元配偶者との間の子供や胎児も含まれます。子供が亡くなっている場合は孫やひ孫などの直系卑属が相続人となります。これを代襲相続と言います。孫もひ孫もいる場合は亡くなった人により近い世代である孫が優先されます。第2順位は亡くなった人の父母や祖父母などの直系尊属です。第1順位の人がいないときに相続人になります。父母も祖父母もいる場合は、亡くなった人により近い世代の父母が優先されます。第3順位は亡くなった人の兄弟姉妹と代襲相続人である甥や姪、おじやおばなどがこれに当たります。第1、第2順位の相続人がいないときに相続人となります。
相続を放棄した人は最初から相続人ではなかったとみなされ、内縁関係にある人は相続人とはみなされません。相続を放棄した人とは、相続が開始されたのを知った時点から3か月以内に家庭裁判所に相続の放棄を申し出た人のことで、事実上相続しなかった人は該当しません。
法定相続人が相続できる遺産の割合を法定相続分と言います。法定相続分は相続の順位と人数で変わります。配偶者がいる場合の法定相続分は、第1順位の法定相続人である子供がいるときは配偶者が1/2、子供が1/2となり、子供が複数いる場合は人数で割ります。例えば、遺産が1,200万円で子供が2人の場合には、配偶者が600万円で子供がそれぞれ300万円ずつ相続することになります。
第2順位の直系尊属(亡くなった人の父母など)が相続する場合は配偶者が2/3で直系尊属が1/3となり、直系尊属が複数のときは人数で割ります。遺産が1,200万円で父母が2人とも存命なら、配偶者が800万円、父母がそれぞれ200万円を受け取ります。
第3順位の兄弟姉妹が相続するときは、配偶者が3/4で兄弟姉妹が1/4を人数で割って相続します。遺産が1,200万円で兄弟姉妹が3人の場合は配偶者が900万円、兄弟姉妹それぞれ100万円が法定相続分です。配偶者がいない場合は順位に従って相続します。同じ順位の法定相続人が複数いる場合には人数で割ります。
法定相続分は相続人の間で相続が合意しなかったときの取り分であり、法定相続人全員の合意があれば自由な割合で相続できます。その場合も配偶者と第1、第2順位の法定相続人には、一定割合の相続分が法律で保障されています。これを遺留分と言います。遺留分の割合は相続人が直系尊属のみの場合は法定相続分の1/3で、それ以外の場合はそれぞれ法定相続分の1/2です。
遺言書があれば、基本的には遺言書に従って遺産分割が行われます。遺言書によって、法定相続人以外の人に遺産が相続される場合もあります。遺言書の内容が「遺産をすべて施設に寄付する」「特定の人にのみ遺産を相続させる」など遺留分のある法定相続人の権利を侵害して遺留分より少額の遺産しか受け取れなかったときは、該当する相続人が遺留分侵害額請求の手続きをすることで侵害された部分の返還を求めることができます。
遺産分割の話し合いを遺産分割協議と言います。遺産分割協議を始める前には法定相続人を把握しておく必要があります。特に相続人が多くなることが予想される子供がいない人の相続や再婚した人の相続、養子縁組した人の相続では法定相続人の確定が重要です。前妻との間の子供や養子、認知している子供も相続の対象となるため、法定相続人が揃っていない状態で遺産分割協議をして全員の合意を得たとしても原則として法的には無効になり、遺産分割協議がやり直しになります。子供だけでなく代襲相続が認められているため、会ったことのない法定相続人と協議する必要があるかもしれません。疎遠になるほど遺産分割協議で合意を得るのが難しくなると言われていますので、そういう意味でも法定相続人の把握は大切です。
法定相続人の確定には、亡くなった人の出生から死亡時までのすべての戸籍謄本を取り寄せなければなりません。最初に亡くなった時点での本籍地の市町村役場から戸籍謄本を取り寄せ、本籍が移された記録があればその前の本籍地から再び戸籍謄本を取り寄せて、これを繰り返しながら出生までさかのぼって血縁関係を把握します。戸籍の取り寄せには時間がかかるため、相続が発生したらなるべく早い段階で手続きを行いましょう。亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本は、客観的に相続人本人であることを証明するために金融機関での相続手続きでも提出を求められます。
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