神道における葬儀を「神葬祭」といいます。神道と仏教においては、死後の世界に対しての考え方が違います、仏教には人が亡くなると極楽浄土へ行き仏様になる(成仏)という考え方がありますが、神道においては亡くなった人は高天原という神々の世界へ行き、子孫を見守る守護神となるという考え方がされます。そのため、神葬祭の意味合いは、亡くなった故人に家の守護神になってもらう為の儀式という事になります。
神道では身内が亡くなると「帰幽奉告」といって神棚と祖霊(守護神になったご先祖様)に奉告し、神棚の扉を閉じて、白い半紙を貼ります。これは神道では死は「穢れ」とされており、死によって神様が穢れてしまわないように、神様を隠すという意味合いがあると言われています。
つまり、神葬祭とは故人から死という穢れを清め、神様として祭るための儀式なのです。 このように神式の葬儀は仏式の葬儀とは根本の考え方が異なるため、神式の葬儀に参列する際、仏教で使われる言葉や作法を使ってしまうと失礼に当たる場合があります。
神葬祭では、まず仏式での通夜にあたる「通夜祭」が行われます。前述したとおり、神道においては死は穢れとされているため、神域に穢れを持ち込まないよう、神社ではなく自宅や斎場にて行われます。参列者は式の前に身を清めるため、手水(ちょうず)の儀を行います。神社でお参りするときと同じ様にひしゃくで水を汲んで、左手、右手の順に水をかけ、続いて左手で受けた水で口をすすぎます。
その後もう一度左手にかけ、最後に口や手を用意されている懐紙で拭きます。式は斎主(さいしゅ)と呼ばれる神職による祭詞の奉上、故人の徳を偲び誅詞を奏上し、雅楽が奏でられる誅歌奏楽(るいかそうがく)、仏式における焼香に近い玉串奉奠(たまぐしほうてん)などの儀式が執り行われます。
玉串奉奠の玉串とは、榊の枝に紙垂(白い紙片)をつけたもので、玉串に自分の想いを乗せて故人に捧げるという意味があります。最後に故人の霊を霊璽(れいじ)と呼ばれる、仏教の位牌にあたるものに移す遷霊祭(せんれいさい)が行われ、これよって故人の霊は家の守護神になるとされています。
神葬祭では通夜祭が終わった翌日、仏式における葬儀、告別式にあたる「葬場祭」が行なわれます。葬場祭は故人の死の穢れを清め、神として祀るための儀式となります。
大まかな流れとしては、参列者はまず通夜祭と同じように手水の儀によって身を清めます。儀式では、修祓の儀(しゅばつのぎ)と呼ばれる斎主が大幣(おおぬさ)を使って斎場や棺、参列者をお祓いし、清める儀式が行なわれます、このとき参列者は起立し、深く頭を下げます。続いて祭詞奏上、玉串奉奠など、通夜祭でも行なわれた儀式が行われます。これが故人に別れを告げる最後の機会となります。
全ての儀式が終わると、「出棺祭」という棺を火葬場まで運ぶ儀式が行なわれます、本来は夜間、松明をかかげて葬列を組むという形式でしたが、現在ではほとんど無くなりました。その後、火葬の前に「火葬祭」が行なわれ、神職が祭詞を奏上し、参列者は玉串奉奠をし、拝礼します。
火葬が終わったあと、仏式と同じ様にお骨をひろい、骨壷に入れます。全てが終わった後、自宅へ戻り塩や手水で清め、無事に神葬祭が終わったことを霊前に奉告します。これを「帰家祭」と呼びます。
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